

持続的な運動は生活習慣病を遠ざけ、ランナーズハイが体を健康に導く
日ごとに気温が上がり、太陽の日差しが気持ちの良い季節になりました。コロナウイルス感染防止の自粛も緩和され、体を動かすのにちょうど良いタイミングですね。
運動が健康を維持するのに役立つということは広く知られていますが、なぜ運動が健康につながるのかをご存知の方は意外に少ないようです。
この記事では
- 運動がもたらす身体面への効果
- 運動が健康につながるメカニズム
について見ていきます。
Contents
持続的な運動は生活習慣病を遠ざける
動脈硬化・糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病は、発症に日頃の生活習慣が深く関わる疾患です。放っておくと心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、脳出血につながる危険な病ですね。
負荷の大きすぎない持続的な運動は、この生活習慣病の防止や改善に大きな効果があります。
心臓病患者がいない民族
タンザニア北部のハヅァ族は、現在も狩猟採集生活を営む世界でも数少ない民族です。
ハヅァ族の男性たちは早朝から狩りに、女性たちはベリー類やバオバブの実を摘んで約9キロもの食料を運び、また摘みに行くという生活を送っています。
2016年のアリゾナ州立大学のハーマン・ポンツァー博士らの研究によると、ハヅァ族は毎日ランニングなどの中強度から高強度の運動を2時間、ウォーキングなどの低強度の運動を数時間行っていることが分かりました。
そして同年代のアメリカ人と比較した場合、ハヅァ族の方が血圧やコレステロールの数値が低く、心臓や血管のバイオマーカーも理想的な数値であることが明らかになりました。
実際に先進国を中心にまん延している心臓病がハヅァ族ではまったく見られず、日常的持続的な運動が心臓病防止に影響を与えていることが分かります。
持続的な運動が健康につながるメカニズム
体を動かすことは、筋肉へのグルコース(糖)の取り込みを促進させ、血糖値を低下させます。
また、負荷の強すぎない運動は、中性脂肪を分解し、エネルギー源として利用しやすくするため、中性脂肪の改善にも効果を発揮します。
これらの効果により心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、脳出血などの重疾患につながる生活習慣病を防止し、健康を維持することにつながるのです。
ランナーズハイが体を健康に導く
運動が健康によいと分かってもなかなか続ける自信がない…そんな風に尻込みをしてしまう方は多いかもしれません。
しかし不思議なことに、私たちの体には持続的な運動をすることにより幸福感を味わう能力が備わっています。
ランナーズハイといわれるこの状態は、ランニングだけでなく、ハイキング、水泳、サイクリングやダンス、ヨガなど、あらゆる持続的な運動によって引き出すことができます。
初めは辛くきついと感じられた運動も、持続することでこのランナーズハイを感じることができます。
ハヅァ族や大昔、狩猟採集生活を営んでいた私たちの祖先が1日中、野山を駆け巡り重い食料を運び続けられたのは、このランナーズハイを引き出す能力も少なからず関係していると言えるのではないでしょうか。
参考文献:ケリー・マクゴニガル「スタンフォード式 人生を変える運動の科学」大和書房,2020年,p.24-30
ハーマン・ポンツァー「狩猟採集者における身体活動パターンと心血管疾患リスクのバイオマーカー」American Journal of Human Biology,2016
厚生労働省 「特定保健指導の実践的指導実施者育成プログラムの開発に関する研究」