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世の中のウェアラブルデバイスに足りなかったものとは【アプリ編】

前回前々回と、世の中にウェアラブルデバイスに足りないものがあり、無いものは自分たちで作りたいという思いからプロジェクトがスタートしたという話を書きました。もちろん、細かいことは他にもあるものの、大きく分けると今回のアプリ編でいったんは完結となります。

これまで、デザイン面で「ずっと身につけていたいデザインのウェアラブルデバイスがない」というのと「ずっと身につけているべきなのにバッテリー持続時間が短い」ということがありました。後者については、今後テクノロジーが発達していくとより低消費電力でオペレーションできるような統合システム(SoC)やセンサー類が出てくるので自然と解決していくかもしれません。ただし、世の中はスマートウォッチのように機能を売りにしていく方向に流れていっているのでバッテリー持続時間よりも機能性を打ち出していくので、Apple Watchのように5年経っても毎日充電ということは続くのかもしれません。

さて、最後にもうひとつだけ、いろいろなウェアラブルデバイスを使ってきて不満に思っていたことがあります。それが、アプリです。実際にはアプリというのは方法であり、「ユーザーが使い続けるためのモチベーションをキープする仕組み」だと思っています。

常に身体に装着し、センサーから取得したデータを元にアプリ内でグラフや数値で美しく見せる。これ自体はある程度実現している製品もあります。ただ、周りに聞くとウェアラブルデバイスを使っていて、アプリをいつも起動してデータを見ているという人はかなり稀でした。Appleのヘルスケアアプリですら起動することはほとんどないようです。

かくいう私も、他社製を使っていた頃は、最初の1, 2週間は面白くて見るものの、それ以降はアプリを起動しなくなっていきます。せっかく毎日記録していっているのに、そのデータを見ないということは、自分自身を知るために計測しているのに意味がなくなってしまいます。

そして、結果としてウェアラブルデバイスを着け続けている必然性がなくなり、何かのきっかけで使い続けるのを止めてしまうという話を多く聞きます。それは壊れたときかもしれませんし、バッテリーの充電をしていたら着け忘れてしまったときかもしれません。私の周りはIT・ガジェット関係が好きな人が多いのにもかかわらず、高確率で似たような理由で使い続けていないのです。

計測したデータをグラフや数値で見ること自体に意味を見いだせないのは、目的が数値を見ることではないからです。なぜウェアラブルデバイスを身につけるのか。特にスマートウォッチのような機能性ではなくて健康のために付けているとしたら、そのもう一歩先に目的があるのだと思います。

つまり、グラフや数値が表示されつつ、それが何を意味しているのか、現時点での自分はどういう状態なのか、そして今後どうしたら良いのか、ということを知るために着けていて、その後も着け続けていくことで改善していくことが目的だと思っています。もしかすると、悪くなっているのを食い止めるということもあるかもしれません。ちなみに、wearaもグラフや数値での表示は基本機能としてあります。

他社比較をすると他社をけなしているように思われるので基本的には避けているのですが、Appleは世界一の企業の1つですから、引き合いに出しても怒られないと勝手に解釈して例に挙げます。

たとえば、このヘルスケアアプリにある心拍のところを見ていただくと、縦線のグラフで上限下限の心拍数を表わし、時系列に表示します。すべてのフィルタを表示、とするとさらに細かな数値を見ることができます。また、歩数の項目を見ても先週との比較などはあるものの、基本的に歩数を時系列のグラフと数値で表わしているだけです。

現在の自分が良いのか悪いのか、1つの項目だけでなくトータルの日常活動として総合的にどういう状態なのかを知りたいと思うのです。そして、何をしたらそれが良くなっていくのかということが分からないと、このアプリを立ち上げて見るモチベーションが上がらないと思うのです。

私はwearaでは、この部分に対しての回答を作りたいと思っています。それが、活動スコアや睡眠スコア、そいてサマリーやサジェスト、楽しんで使い続けるためのゲーミフィケーションのような仕組みなどを盛り込むようにしています。これらの中身については追々詳細をご紹介していくつもりですが、今回は世の中のウェアラブルデバイスではこれらが足りないと思っていて、wearaではそれを解決していくというお話です。

冒頭にも書きましたが、世の中にあるウェアラブルデバイスには大きく分けて3つの問題点があり、それらを解決していく話を書きました。デザインとバッテリーについては、すでに公表している情報で解決しているということはお分かりかと思います(前者については主観的評価でもあるので、万人にとって解決しているとは一概に言いにくいところもありますが、私は解決していると信じています)。

3つ目については、今後リリースされるアプリにおいて判断してもらうことになると思います。デザインとバッテリーの2つはハードウェアなので後から簡単に変えることができませんが、アプリについては修正していくこともできますし、リリース後にもいくつかの機能を追加していくことを予定していますので、どんどん良くなっていき、どんどん面白くなっていくものを提供できると思っています。

ちょっと、ハードルを上げすぎだとプロダクトデベロップメントの大暉から怒られるかもしれませんが、そういう意気込みで企画して進行していることには間違いありません。どうか、ご期待ください。

ミュージシャンになるつもりで青春時代をかけた音楽からMacの道に入り、その後にApple周辺機器を販売するトリニティ株式会社を起業。オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。口癖は「諦めたらそこで試合終了」と「宝くじは買わなければ当たらない」。