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世の中のウェアラブルデバイスに足りなかったものとは【バッテリー編】

タイトルに問いと答えが入っているので、内容が想像できるのは良いことかもしれませんが、記事を読み進めていくと答えが出てくるというようなワクワク感を味わうことはできません。シリーズ化したかったのでタイトルをこのように付けたのがアダになってしまったのではないかと心配している、wearaプロデューサーのHossyです。

この記事は前回の「世の中のウェアラブルデバイスに足りなかったもの【デザイン編】」という記事の続編です。連続して読んでいただくと、大河ドラマのように感情移入して読み続けることができますので、是非とも最初からお読みください。

前回はデザイン編ということで、世の中のウェアラブルデバイスに足りなかったのはデザインだという話を書きました。今回はバッテリー編です。当然、バッテリーが無いという意味ではなく、バッテリー持続時間(バッテリーライフ)が短いという話です。

ウェアラブルデバイスの中でも群を抜いて販売数が多いのがApple Watchです。私も初代からSeries 5まで毎回新しい世代に買い換えて使い続けています。しかし、どんどんと新しい機能を追加していくので、5年を経てもなお約2日でバッテリーが切れてしまいます。

ただし、Apple Watchに代表されるいわゆるスマートウォッチはさまざまな機能を搭載しており、その機能を活用していくことを目的としたデバイスであるため、バッテリーライフよりも機能を優先するということについては、決して間違いではありません。

wearaのように、日常生活を24時間計測していきたいということを目的としているデバイスにおいては、バッテリーライフというのはデザインの次に大きな要素であると考えています。wearaを開発する際の初期コンセプトでも「約1ヶ月のバッテリーライフ」というのは最初から掲げており、これを実現するためには何が必要なのかという逆算の開発を行なってきました。

ウェアラブルデバイスを使ったことがあり、現在は使っていない人にアンケートを採ると、かなりの割合でバッテリーがいつの間にか切れていた、バッテリーを充電したときに再度装着するのを忘れてそのまま使わなくなってしまったというような、バッテリーを充電するときに外すという行為が継続して使用しない理由の1つに挙げられました。

私は、ウェアラブルデバイスは常に身につけておけるというのが基本だと考えています。使いたいときにだけ使うのであれば、身につけておく必要がないからです。特に、活動や睡眠、バイタル情報を計測するのであれば、連続的に長い間継続して計測しておく必要があります。それにより、さまざまなデータを分析することができるからです。細切れになってしまっているデータでは傾向などを把握することが困難になってしまうからです。別の機会に詳しく説明しますが、人間は生体リズムに支配されて生きていますので、健康的な生活を送るためには日々の生活リズムを見なすことが重要です。

世の中にあるさまざまなウェアラブルデバイスとバッテリーの持続時間だけを比較するのはあまり意味がありません。それは、機能によるからです。

たとえば、wearaはApple Watchと比べれば15倍ものバッテリーライフとなります。しかし、これはまったく機能が違うものを比較しているので、そこに優劣は付けられません。とはいえ、すべてのデジタルデバイスはバッテリーが無くなってしまったら、ただの重りとなってしまうので、バッテリーライフが長ければ長いほど使い続けられる時間が長いので、ベターであることは間違いありません。

最近では長いバッテリー持続時間をうたうウェアラブル製品も少しずつ出てくるようになりました。ただ、気をつけなければいけないのは、そのようなうたい文句の製品であっても機能をフルに使うようになるとバッテリーライフが減るものが多いということです。少し離れた例えになりますがが、コンピューターのようなデバイスは、ユーザーがどのように使うかによってまったくバッテリーライフは変わるので、メーカーのバッテリーライフ表記にはある決められた方法で使用したらという注釈付のバッテリーライフとなります。なお、コンピューターの場合にはある程度標準化された計測方法があります(詳しくはこちらのJEITAバッテリ動作時間測定法をご覧ください)。

wearaでも、日常的に計測するための必要最低限の機能を24時間使い続けたら、という定義があります。基本的にはそれはユーザーに表示するためのすべての機能を使っている状態です。ただ、たとえばペアリングをしたスマートフォンに電話の着信があった場合に、wearaがバイブを振動させてユーザーに教えてくれる機能があります。wearaは1日に2回電話がかかってくるという定義付けをした状態でのバッテリー持続時間を計算しています。もちろん、もっとかかってくることがある人もいるかもしれません。ただ、現代においては1日に2回で1ヶ月で60回の電話着信を受けるというのは、そんなに少なく見積もった数字ではないと考えています。

さて、そんな「バッテリー持続時間が約1ヶ月」を実現することが大前提であったwearaは、開発時に非常に大きな困難にぶち当たることになります。この困難が何か、そしてどのように乗り越えていくのかは別の開発ストーリーとしてご紹介したいと思います。

今回のこの記事では、世の中のウェアラブルデバイスに足りないもの(のひとつ)はバッテリー持続時間であるという話でした。

ミュージシャンになるつもりで青春時代をかけた音楽からMacの道に入り、その後にApple周辺機器を販売するトリニティ株式会社を起業。オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。口癖は「諦めたらそこで試合終了」と「宝くじは買わなければ当たらない」。