睡眠負債の蓄積が認知症リスクを高める!?リスク軽減のために今からできること
日本では少子化とともに、65歳以上の高齢者人口が年々増えています。
内閣府の令和元年版高齢社会白書によると、2035年には日本の高齢者人口は総人口の33.4%を占めると考えられています。また、高齢者のうち認知症を患う人の割合は2040年には802万人、21.4%にものぼると推定されています。
今後、高齢者のうちおよそ5人に1人が罹患する恐れがある認知症。
近年、各国の研究結果から認知症発症リスクに睡眠不足が蓄積した状態(睡眠負債)が深く関わっていることが分かってきました。
睡眠負債がなぜ認知症とつながるか、その怖い関係についてお伝えします。
Contents
アルツハイマー型・レビー小体型認知症と血管性認知症
日本では、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症といった、脳や脊髄の認知機能の細胞の障害が原因のもの、脳梗塞や脳出血などにより発症する血管性認知症の2タイプが大多数を占めています。
ここでは睡眠負債の蓄積がどのように関わっていくのかを認知症のタイプ別に見ていきます。
睡眠負債が高めるアルツハイマー型とレビー小体型認知症のリスク
アルツハイマー型認知症では、脳が活動した時に発生する老廃物の一部である、アミロイドBというタンパク質が脳に蓄積することが発症原因の1つであると考えられています。睡眠負債により、この物質の蓄積量は5.6倍にもなるということが2013年のワシントン大学の研究発表で報告されました。
アミロイドBは睡眠中に分解され脳内からの排出が行われるため、睡眠不足により分解・排出されず過剰に蓄積され、アルツハイマー型認知症の発症リスクが大きく高まるというのです。
さらに2017年の南フロリダ大学の研究者らの発表で、アルツハイマー型認知症の15%は睡眠だけが原因となることが明らかになりました。
また、レビー小体型認知症においても、α-シヌクレインというタンパク質の脳への沈着が発症原因の1つと考えられていますが、この物質は覚醒時より睡眠時により多く排出されることが2015年のスウェーデンのウブサラ大学の研究によって報告されています。
睡眠負債で血管性認知症の発症リスクも大きくなる
2017年の南フロリダ大学の研究発表では、血管性認知症についても、睡眠の不足や睡眠の質の悪化が高血圧のリスクを上昇させ、2型糖尿病の発症リスクを高め、脳血管性疾患のリスクを増大させるということも報告されています。
いずれのタイプの認知症においても、睡眠負債が発症に大きな影響を与えるということが分かります。
認知症リスク軽減のために今からできること
睡眠負債を蓄積させないことで、認知症発症リスクを軽減することが可能です。睡眠負債をためないために、今から心がけたい5つのポイントをご紹介します。
- 就寝環境を清潔に保つ
- 規則正しい起床・就寝を身につける
- 朝に日光を浴びる
- 毎日、適度な運動を行なう
- 日中、カフェインやタバコ、アルコールを過度に摂りすぎない
生活リズムを整えて、睡眠負債をためず、認知症と無縁の生活を送りたいですね。
参考文献:
白川修一郎「命を縮める『睡眠負債』を解消する 科学的に正しい最速の方法」祥伝社,2018年,p.114-119
参考:
内閣府「令和元年版高齢社会白書(概要版)(PDF版)」2019年,第1章 高齢化の状況 第1節