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【睡眠負債と肥満】質の悪い睡眠が肥満・糖尿病を引き起こす原因に

日々のわずかな睡眠不足が借金のように蓄積し、心身の健康にさまざまな問題を引き起こす睡眠負債。

日本で深刻化している肥満や2型糖尿病に大きな影響を与えていることがわかっています。

一見、あまり関係はなさそうな睡眠負債がなぜ肥満や糖尿病につながるのでしょうか?

今回は、睡眠負債と肥満、糖尿病との関係、つながりを生む2つの理由についてお伝えします。

睡眠不足では食欲増進ホルモンが増え、抑制ホルモンは減少する

2004年にカリフォルニア州のスタンフォード大学医学部が行った、8時間睡眠、5時間睡眠の人それぞれの血中の食欲増進ホルモン(グリシン)と食欲抑制ホルモン(レプチン)量を比較する研究で、驚くべき結果が報告されました。

5時間睡眠の人は8時間睡眠の人より、血中グリシンが14.9%も多く、血中レプチンは15.5%も少なかったのです。

この結果を裏付けるように、2005年のコロンビア大学の研究報告では、7~9時間睡眠の人に比べ4時間以下の睡眠の人は肥満発症のリスクが235%、5時間睡眠では60%、6時間睡眠では27%も高いことが分かりました。

2つの研究結果から、6時間以下の睡眠時間では太りやすく、睡眠時間が短いほどより肥満になりやすいということが明らかになったのです。

また、夜間の睡眠時には、骨格や筋肉を発達させ脂肪を分解する成長ホルモンが作られます。

十分な睡眠がとれないことで、この成長ホルモンの分泌が低下することも、睡眠不足が肥満につながる原因の1つと考えられます。

 

睡眠負債が太る生活リズムを作り出す

睡眠不足によってホルモンが増減し、食欲や脂肪燃焼に影響を及ぼしても、それがすぐに肥満や糖尿病に直結するわけではありません。

睡眠負債が蓄積すると、以下のように生活リズムが変化していくケースがよく見られます。

そうして作られた太る生活リズムにより、肥満が引き起こされていきます。

 

睡眠負債が太る生活リズムを作る流れ

段階1.睡眠時間の不足や質の悪い睡眠により、朝起床しづらく朝食を摂る時間がなく仕事や学校に向かうことが多くなる

段階2.睡眠負債がたまると、運動時はもちろん日常生活においても、少しの負荷が体にかかっただけで心拍が上昇し苦しくなるため、階段を使わずエレベーターを利用したりと体を動かす機会が少なくなる

段階3.睡眠負債により食欲増進ホルモンが高まり、さらに朝食を摂っていないことから、夕食以降の食事量やカロリー摂取が増える

段階4.睡眠負債が大きくなると、生存本能から体が危険な状態だと判断し、糖質代謝のパータンもエネルギーをためこむ方向に変化してしまう

日々わずかずつ蓄積した睡眠不足は、このような恐ろしい肥満システムを作り出してしまうのです。

 

睡眠に問題がある人の2型糖尿病発症リスクはそうでない人の約3倍

東京大学大学院の川上憲人教授が岡山大学在任中に発表した研究内容によると、2型糖尿病の発症リスクは、寝付きにくい人は約3倍、眠りが安定しない人は約2倍高いことが明らかになっています。

また、2016年のタイのマヒドン大学の研究では、5時間以下の睡眠の人では1.48倍発症リスクが高いということが報告されています。

しかしながら、今回ご紹介した睡眠負債が生む太る生活習慣や、糖尿病の発症リスクは、睡眠を改善することで防ぐことが可能です。

 

新型コロナウィルスの影響で、心身に疲れやストレスを受けていらっしゃる方が多いです。睡眠時間をしっかりと確保し、健康を維持していきたいですね。

 

参考文献:白川修一郎「命を縮める『睡眠負債』を解消する 科学的に正しい最速の方法」 祥伝社,2018年,p.90-99

田ケ谷浩邦「睡眠関連ホルモンの計測」生体医工学,46巻2号,2008年,p.169-176