風邪を引きやすい、ミスが増える……「睡眠負債」が引き起こす体への悪影響
wearaでは睡眠測定機能を活用し、アプリで自分の「睡眠負債」を確認できるようにしています。
「睡眠負債」(Sleep Debt)は「眠りの借金」のこと。
毎日1〜2時間程度のちょっとした睡眠不足が借金(負債)のように蓄積されていくと、心身にさまざまな影響を与えてしまいます。
ただ、言葉は知っていても具体的にどんな影響が起きるのか、実はよくわかっていないという人も多いかもしれません。
睡眠不足が積み重なり、睡眠負債を抱えることがどれほど体に負担をかけているか、心身への影響をまとめました。
Contents
前頭連合野がダメージを受ける
脳の前頭連合野は睡眠負債の影響を受けやすい領域と言われています。
前頭連合野は意思決定したり、不要な行動を抑制したり、意欲をコントロールしたりと、日頃から人間の社会生活に関わる大きな働きをしています。
他に担っているのは、情緒安定機能、共感機能、情報を一時的に保持する「ワーキングメモリ」機能、注意維持機能などさまざま。
睡眠負債が蓄積すると前頭連合野の働きが低下し、下記のような現象が起こりやすくなります。
ミスの増加
記憶力の低下や記憶想起のミス(「やったつもり」など)、思い違いの増加を引き起こしやすくなります。
作業の漏れやミスが増加したり、作業スピードも低下したり、特に仕事においてはいい影響がありません。
思考力の低下
睡眠負債が溜まると論理的思考力も低下して、作業の段取りをつけづらくなります。
仕事や家事、勉強の効率も悪化させてしまいます。
「仕事ができない」と言われている人も、実は睡眠負債によって前頭連合野の働きが落ちているだけかもしれませんよ。
モチベーションの低下
「意欲」は脳の高次脳機能の中でも、睡眠の影響をもっとも受けやすい機能のひとつ。そのため、睡眠負債の蓄積は、意欲やモチベーションを低下させてしまいます。
「毎日やる気が出ない」「何もしたくない」と感じているなら、無理に何かをやろうとせず、2週間ぐっすり寝てみるだけで解決するかも…!?
記憶力と学習能力が低下する
前頭連合野にはワーキングメモリがあります。このシステムには、記憶を一時的に保持して適切な思考や行動につなげ、状況に応じて必要な記憶を取り出してくる仕事などがあります。
また、脳の前部帯状回皮質というところには、情報を取り込むために必要な注意を維持する役割もあるのだそうです。
そのため、睡眠不足や睡眠の質の低下が続くと、「記憶の入口と出口」に強く影響が出てしまいます。
記憶が定着されにくくなる
- 本や教科書からの知識の記憶
- エピソード記憶
- 運転のように体で覚えて無意識に使える「手続き記憶」
このようなさまざまな記憶が定着されにくくなります。
学習・記憶の整理を阻害
記憶には短期記憶、近似記憶、長期記憶の3つがあり、情報が保持される時間によってそれぞれ分類されています。
睡眠不足のときにありがちな「ど忘れ」は、近似記憶の欠落です。
長期記憶の整理と索引づくりには睡眠がかなり関与しており、睡眠負債がたまると長期記憶への固定と整理に影響が出ます。
つまり、日中にいくら勉強したとしても学習効率が低くなるという悲しい結果に…。
「試験前はきちんと寝なさい」という先生の言葉は、間違いではないのです。
まだまだある、睡眠負債による影響
この他にも、睡眠負債がたまるとこんなことが体で起こってくるようになります。
免疫力の暴落
過去1週間に7時間以上睡眠を確保していた人と比べて、5〜6時間睡眠の人は4.24倍、5時間未満の人は4.50倍風邪を引く確率が高い
肥満になりやすい
7〜9時間睡眠の人に比べて、4時間以下の睡眠時間の人は肥満の危険率が235%も高く、5時間睡眠でも60%、6時間睡眠でも27%高い
高血圧
寝付きにくい人や、寝ている途中に目覚めやすい人など、眠りが安定しない人は、そうでない人と比べて約2倍も高血圧になりやすい
上記以外にも、メンタルヘルス、認知症、美容などさまざまな視点でも睡眠負債の蓄積はよくないと言われています。すべて書きだすと1記事では足りないほどです。
解決策はまずいつもより早く寝ることから。
寝る前のネットサーフィンを今日から我慢してみてはいかがでしょうか。
参考文献:
白川修一郎「命を縮める『睡眠負債』を解消する 科学的に正しい最速の方法」祥伝社,2018年,p.62-130